夢中で君に恋してる

ジャニーズとレモンサワーとハラ美

心を病んだ親友に、頑張ろうと言われた。

8月に姿を消した親友がいた。

 

皮肉屋で、ワーカーホリックで、ひねくれてて、繊細で、大胆で、多分、嫌われやすいタイプだと思うけど、面倒見が良くて妙に気が合い、泥酔した私を何度も迎えに来ては送ってくれた。

 

仕事で大きな不幸が起こり(それはそれはヤフートピックスに載るほどの)大丈夫?と連絡したら未読のまま姿を消した親友。

 

 

会社にも行ってないと、風の噂で聞いた親友。

 

 

便りがないのは元気な証拠、なんて言葉昨今信用できないな、と思った。便りがある方がいいに決まってる。便りがないと心配になるだけじゃないか。便りを送って、返事がなかったらそわそわするだけじゃないか。私も私でとても臆病だから、返事が来なかったら心配だなと思うと怖くなり、それ以降連絡をすることもなく、へらへら逃げた。気づいたら3ヶ月経っていた。

 

昨日、0時過ぎに突然電話がきた。夢かと思った。何だろう。一番近い感覚は、あ、生きてた。だった。そう思ったのが怖かった。逃げたくせに連絡きたら人一倍心配してたことを思い出して、自分が情けなかった。どうやって電話に出るのか正解がわからず、逃げた時と同じようにへらへらと、どした〜?と言った。笑われた。なんだ、笑う元気あるんじゃん。

 

ポツポツとどうしてたの?と話をして、わかってはいたけど、鬱になり、ほとんど使ってなかった有給を存分に使い会社を休み、今ならし勤務してるらしい。ワーカーホリックだったのに、仕事に触れるなと言われるのは辛かったと言っていた。でも最初の1ヶ月はずっと眠くて常に頭がぼんやりしてて、何をしてても涙が出るし、死にたいと本気で思った、らしい。この頃、死にたいという言葉があまりに軽率に使われていて、それは私もだけど、軽率に使われ過ぎてるから嘘か誠かの判別が難しくなってる気がする。でも親友の死にたいは本気の方だったんだろうな。そんなこと言うなよ〜とヘラヘラしちゃったけど、ちょっと泣きそうだった。

 

私たちは今年、コロナでいろんなことに気付かされた。正直得るものなんてひとつもなかったし、本当に失うものばかりの1年だった。コロナがなければ親友は鬱にもならなかったし、今の部署を離れることもなかった。コロナがなければ私たちはもっと自由に暮らせた。好きなところに好きなだけ行けた。何してても非難されることもなかったし、可愛いリップを見せびらかすこともできた。何が新しい生活様式だよ、何がソーシャルディスタンスだよ、ばかやろう。

 

1時間ぐらい電話して、近況やくだらない話や思い出話でゲラゲラ笑った。何も変わりのない日々のようだった。でも1時間を超えるとどんどん深い話をになる。そういえば私たち、酒を飲めば飲むほど、恥ずかしい言葉もすらすら出るような間柄だったよね。一番しんどいのは親友なのに私の真剣な相談にもちゃんと乗ってくれて、大丈夫だよ、と言ってくれた。そんな人に気遣わなくていいのに、親友はそういう人だ。鬱(親友曰く良くなったらしいけど、一応)に、頑張れ、は言ってはいけないと言うことぐらい私も浅い知識で知ってる。でも、そんなの無視して、私の感情論だけで親友に伝えたかった。

 

「ねえSくん、」

「なに?」

「私が今、頑張れ、って言ったらしんどい?」

 

これを先に聞いたのは私なりの考慮であり、私だけの我儘だった。

 

「全然しんどくないよ。でも頑張れより頑張ろうの方がうれしい。」

 

 

そうか、頑張れじゃなく、この生活様式により、私にだって少なからずストレスがかかってるんだ。それを親友はわかってるんだ。皮肉屋でワーカーホリックでひねくれてるけど、優しくてカラッとしてる。君はそんな人だ。励まされてしまった。

 

「俺もなんとなく頑張るから○○さんもなんとなく頑張ろうぜ〜」

「落ち着いたら、○○さんちで鍋でもやろうぜ〜」

「大丈夫、きつい時もあるけど、思ったより俺元気にやってるから!」

 

頑張ろうって、なんかいい言葉だな。

 

今まで全然好きじゃなかったし、テレビで聞いてもうっとおしいなと思ってたけど、窮地に立たされた親友から言われるとびっくりするほど、いい言葉だなと思える私は単純だ。1人じゃ頑張れないけど、彼も頑張ってるなら、私も頑張ろう。月並みだけど、1人だけど、独りじゃないっていいな。

 

驚くほど全てが思った通りにならなかった2020年、精神衛生が崩壊されそうな時もあったけど、一緒に頑張ろうと言ってくれる人がいるのはとても贅沢だと思った。何も意気込む必要はなくて、何かを思い出すついでに、頑張ろうかなーぐらいでいいんじゃないかな。私にはそのぐらいがちょうどいい。

 

親友は来月から部署を変え、仕事を再開するらしい。きっと心に負った傷は一生癒えないし、一生忘れられないし、何が引き金になるかもわからないけど、次の部署で業績を上げ、それを傷の上に上乗せしてうまく共存していくのが、今の目標、と言っていた。なんてたくましいんだ。さすが自慢の親友。

 

頑張ろう、Sくん、頑張って生きよう。

 

だけど、無理はしないで。

 

頑張ろう、私。頑張って生きよう。

 

 

頑張ろうと言ってくれた親友のためにも。

 

 

余談だけど、私と親友は夜な夜な酒を飲むし、仕事の愚痴や恋愛や人間関係と、本当に何でも話すし、だけどお互いを異性としてみてなくて、1人の人間としてとても仲良くて、話してるといとも簡単にポエマーにもなるし、すごく距離が近いのに、お互いずっと苗字にくん付けさん付けの間柄で、ちょっとこの関係いいな、と思うから、永遠なんて言わないから、あとたった50年、この関係でいたいな。